有明という街の話をするとき、
どうしても微妙に会話がすれ違う瞬間があります。
「有明って静かでいいよね」
という声と、
「いや、人多すぎて落ち着かないでしょ」
という声。
どちらも真顔で言われるので、
こちらも真顔でうなずくしかありません。
でも内心では、
それ、見ている有明が違いますよね
と思っている自分がいます。
住む人にとっての有明は、生活のサイズ感がちょうどいい
イベントのない日の有明は、
拍子抜けするほど静かで平和です。
散歩中の犬と、散歩されているように見える飼い主。
パティが何枚か乗ったワッパーを美味しそうに頬張るカロリーお化けな近隣民。
遠くの工事現場を見て「また何かできるのか」とうっすら期待している都市開発オタク。
風は強めですが、
それすら「湾岸あるある」として受け入れられている様子があります。
コンビニは普通に混みすぎないし、
スーパーは夕方になるとそれなりに賑わう。
新しいマンションの前には宅配の車が止まっている。
未来都市っぽい見た目なのに、
中身はとても現実的で、地に足がついている。
住んでいる人にとっての有明は、
特別な場所というより、
ただの“日常が流れる街”なのだと思います。
来る人にとっての有明は、時間との戦いが始まる場所
一方、遠征で来た人の有明は様子が違います。
「トイレどこだっけ」
「物販間に合う?」
「帰りの導線どうなる?」
まだライブは始まっていないのに、
すでに一日のクライマックスにいるような緊張感。
普段なら気持ちよく感じるはずの広い道路も、
その日はただの“距離”として立ちはだかる。
風が強い日は、もはや軽い試練です。
有明アリーナや東京ガーデンシアターに向かう足取りは、
もはや遠征などではなく軽い作戦行動です。
街を楽しむというより、
街を攻略しに来ている感覚に近い。
そして無事たどり着いた頃には、
まだ何も始まっていないのに
一日の体力の3割くらいを使った気持ちになります。
同じ街なのに、RPGの難易度が違う
住む人にとっての有明は、
散歩クエスト中心の平和なオープンワールド。
来る人にとっての有明は、
時間制限つきのストーリーミッション。
同じ広い歩道も、
前者には「空が広くていいね」と映り、
後者には「思ったより遠いな」と映る。
街は何も変わっていないのに、
プレイヤーの設定だけが違うのです。
だからこそ、この温度差はちょっと愛おしい
静かな日に歩くと、
ここはとても落ち着く場所だと思える。
イベントの日に歩くと、
ここはとても特別な場所だと感じる。
どちらの感覚も嘘ではなく、
どちらもちゃんと本物です。
生活の舞台でもあり、
高揚の舞台でもある。
そんな二重構造を持っている街は、
意外と珍しいのかもしれません。
もし次に有明を歩くときは、
少しだけ想像してみてもいいのだと思います。
この景色を、
まったく違う気持ちで見ている誰かがいることを。
そう思うだけで、
街の見え方はほんの少しやわらぐ気がします。
